アルゴリズムの構築

アルゴリズム(algorithm)というのは、「問題解決のための論理・手続」を意味する用語です。
地球観測分野での衛星データ解析では、「問題解決」はセンサーシグナル(衛星搭載センサーが観測する観測輝度や観測温度等)から特定の地球物理量(気温、風速、雲の粒子の大きさ等)を求める作業を指し、「論理・手続」はセンサーシグナルと地球物理量を結びつける法則と処理手順を指します。アルゴリズムをコンピュータのプログラムとしてシステム化したものを、データ解析システムと称します。
アルゴリズムを構築した後には、データ解析システムの研究や、アルゴリズムの妥当性の検証が重要になります。

アルゴリズムの構築には、経験的手法、半経験的手法、物理的手法があります。それぞれ一長一短ありますが、計算機が発達した今日では、物理的手法を用いることが主流になってきました。

物理的手法

物理的手法というのは、センサーシグナルと物理量の関係を科学的裏付けのある方程式を元に構築する手法です。たとえば、雲粒の大きさを推定したい場合であれば、雲粒半径(R)の場合のセンサーのシグナル(L)が科学的裏付けのある式(f)で表現します。

L=f(R)

この式(f)を求めるのは主に「電磁波の散乱問題」の領域です。一般に、fはかなり複雑な式になるため、実際のアルゴリズムの作成では、電磁波の散乱を解くプログラム(=放射伝達プログラム)を用いてLをシミュレーションしたデータベースを作成し、それをfの代わりとすることが多くなっています。RをLから求める作業にも工夫が必要です。一般には、ニュートン法等による方程式解法と繰り返し演算を組み合わせた手法が用いられますが、最近では人工知能(ニューラル・ネットワーク)による手法も試行されています。本研究室では、高精度かつ高速なアルゴリズムを構築する研究を行っています。また、地上観測によって得られた現地データと衛星解析の結果を比較する検証作業も行っています。

上記のように、 物理的手法によって開発されたアルゴリズムの善し悪しは、放射伝達プログラムの性能に大きく依存することなります。そこで、「放射伝達に関する研究」が重要になってきます。

参考)GLIセンサーから雲の光学的厚さ(τ)、雲粒半径(R)、雲頂温度(Tc)を求めるアルゴリズムのフローチャート(ATBD for ADEOS-II/GLI by JAXAより抜粋)

中島研究室 – Nakajima Laboratory – "Dialogue with Blue Planet"
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